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春との旅 [ネタバレ映画レビュー (日本)]

haru_tono_tabi.jpg春との旅 (単行本) 小林 政広 (著)


実はこの映画は昨年12月7日の完成披露試写会で鑑賞した。
もう数ヶ月が経過したのに、鑑賞したときの感動はいまだに続いている。

この映画で恥ずかしながら私は初めて仲代達矢のすごさを知った。
これまでは大御所というイメージしかなく、その演技に触れることもなく過ごしてきた。

仲代達矢の演技を初めて見たのはもう30年以上も前のことだ。
NHK大河ドラマの「新平家物語」で、平清盛を演じていた。
もちろんそのころの私はまだ子供で、生まれて初めて見た大河がこの作品だった。

1980年の「影武者」も映画館で見た。
20代前半のころに、黒沢明監督映画を何本も鑑賞したが、うまい俳優さんだと思っただけで、ストーリーの中に引き込まれたにすぎなかった。
2007年の大河「風林火山」では胡桃を掌でごりごりする癖のある武田信虎が印象的だった。

そして今回の「春との旅」。。。

仲代達矢は決して老漁師には見えない。
ステテコ姿だって似合っているとは思えない。
でも、見えなくても似合っていなくてもいいのだ。
仲代達矢の演じる忠男の職業はこのストーリーにはあまり問題ではないからだ。

忠男が親戚を訪ね会話する姿に、人は自分の現在や将来を垣間見ることができるのではないだろうか。
仲代達矢は忠男になりきっていながら、忠男そのものではなく、人生の語り部として忠男を演じているように思える。
スクリーン上で忠男が語る姿は、見る人ひとりひとりの人生の問題を語ってくれているような気がしてくるのだ。

仲代達矢という俳優は、それだけ普遍的なものを演じることができる俳優だということに初めて気づかされた。
「本当の演技」ってこういうものなのではないだろうかって、映画鑑賞中、何度も感じた。

こんなことは既に大勢の人が知っていることなんだろうと思うけれど、親と同世代の俳優である仲代達矢に触れる機会は、正直そうそうなかったというのが本当のところだ。

例えば演劇が好きならば、彼の演技をもっと見ていただろう。
しかし、私はたまーに演劇鑑賞をするぐらいで、それも文学座のお芝居が多いので、彼の生舞台を鑑賞したことはまだない。

映画を見てこんなことを感じたのは初めてのことだったので、最初は正直戸惑った。
それでも、仲代達矢という役者が、普遍的な世界観を見せてくれたことに、私はとても幸せな気持ちになれたのだ。

忠男と一緒に旅する孫娘の春は徳永えりが演じている。
彼女が出演した「フラガール」は映画館で見た。
春は歩き方がとても可愛い。
そもそもこの映画は忠男にしても、春にしても、歩き方に特徴がある。
そして、春はセリフが少ないと思う。
しかし演技はかなり印象的だ。

周りも芸達者な役者さんばかりで、安心して見ることができる。

泣けるのに心が温まる。
「春との旅」はそんな映画だ。

まだ上映されて間もないので、ストーリーは書かない。
でも、多くの本物の役者がそろった映画だと思う。
実のところ、申し訳ないことに、全く期待せずに試写会に出かけたのだが、機会を見つけて再び鑑賞したいと考えている。

自分の年齢なりに、投影するキャラクターも変わってくるだろうし、感じ方も変わってくるだろうと感じさせる映画だからだ。
そういうことを感じさせるこの映画は、時代に関係なく、世代に関係なく見ることができる、名作だと思うのだ。

<データ>
原作・脚本・監督: 小林政広
音楽: 佐久間順平
主な出演:
忠男(仲代達矢)…老漁師
春(徳永えり)…忠男の孫娘
金本重男(大滝秀治)…忠男の兄
金本恵子(菅井きん)…兄嫁
木下(小林薫)…愛子の隣人
清水愛子(田中裕子)…刑務所に入っている忠男の末弟の内縁の妻
市川茂子(淡島千景)…忠男の姉。旅館を経営している。
中井道男(柄本明)…忠男の弟
中井明子(美保純)…道男の妻
津田伸子(戸田菜穂)…春の父親の再婚相手
津田真一(香川照之)…春の父親

2010年/日本/134分
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