SSブログ
ネタバレ映画レビュー (日本) ブログトップ
前の10件 | -

ニライカナイからの手紙 [ネタバレ映画レビュー (日本)]

niraikanai.jpgニライカナイからの手紙 低価格版 [DVD]

何度何度も最初の部分で鑑賞するのを挫折して、中断したままになっていた作品。
ようやく鑑賞完了しました。

途中からは悪くないのだけれど、出だしが説明的すぎるんじゃないかと思う。
映画館とかの大画面で見ていたら、沖縄竹富島の美しさでまあいいかってなるんだろうけれど、小さな画面で見ていると、画面の美しさよりもたぶんストーリーのほうが重要になってしまうので、そういう点では、弱い映画だったのではって感じる。

最近はi padで作品を見ることが多いので、その画面で見て、もう一度見たいと感じたものは46インチの液晶テレビで見ることにしている。小さな画面で見ていても、大きな画面でもう一度みたいと感じたのは最近では「半分の月がのぼる空」(実写版映画)だ。半月の話はまたの機会に書くけれど。

話は戻るけれど、出だしから蒼井優ちゃんがもっと出ていたら、何度も挫折しなかったのではと思う。それからまあ個人的な意見なのだけれど、そもそも「いい人南果歩」はあんまり見たくない。彼女にはドロドロの悪女役をやってみてほしい。男を手玉にとって、のしあがっていくような女性を演じてみて欲しいのだ。絶対にすごい迫力だと思うのだけれど……!

そんなこんなで、映画の構成があんまりよくないのではないかって思う。
沖縄が舞台なので、のんびりとした雰囲気で始まるのはわからないでもないけれど、現在の悩める風希(ふうき・蒼井優)、または高校生ぐらいから始まって、そして時間が戻るのでもよいのではないかな。

映画の最後でお母さんが既に亡くなっているというネタバレがあるので、そこを際立たせるために、最初は幼い頃の風希から初めて成長させていったのかも知れないけれど。
でもネタバレがなくても、最初からお母さんが亡くなっているのは見ている側には感じられます。題名もそのままズバリだと思うしね。

「ニライカナイ」というのはWikiによれば、「沖縄県や鹿児島県奄美群島の各地に伝わる他界概念のひとつ。理想郷の伝承。」とあるので、そこからの手紙といえば、書いた本人は生きていないだろうなと予想できるというものです。
ただ、この言葉を私が認識したのは、やっぱりこの映画が封切られた2005年だったような気がします。

人と人との絆やつながり、さりげないやさしさや思いやりといったことは感じられる映画なので、鑑賞後はそれなりに良い気分になれます。
またいつの日か風希はよいカメラマンになって、やさしい写真を撮り続けるのではないかという希望も感じられます。
もしかしたらふるさとに帰るかもしれないけれど、それにしても故郷と都会と自分とをつないだ写真を撮り続けると思う。

風希の先生にあたるカメラマンも、さりげなく写真雑誌を風希に見せたりして、そんなやさしさは映画全編に満ちあふれています。

後半、風希がガラスの浮き玉を人々に持たせ撮影している様子はなかなか良い感じ。ああいう風に声をかけられたら、多くの人はモデルとして応じるのではないかと思う。
公園などで子供がちょっと声をかけられただけで、「怪しい人に声をかけられましたので注意して下さい」などというメールが回ってしまう昨今、このやり方なら大丈夫かもしれないと思わせられた。

まだ若くて、これから先どんな生き方をしたら良いだろうって迷っているなら、見てもいいかもしれないと感じた映画。
沖縄の海にも癒されます。

<データ>
監督・脚本: 熊澤尚人
原作:堀込寛之
配給 : IMJエンタテインメント、ザナドゥー
主な出演 :
安里風希(蒼井優)
安里尚栄(平良進 )… オジイ。風希の祖父。沖縄竹富島で郵便局長をしている。
安里昌美(南果歩 )… 風希の母親。
内盛海司(金井勇太)
鳩山レイナ(かわい瞳)
平良美咲(比嘉愛未)
相葉幸子(中村愛美)
崎山(斎藤歩)
田中(前田吟 )… 東京・渋谷一郵便局長。

2005年6月4日公開/日本/113分


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

問題のない私たち [ネタバレ映画レビュー (日本)]

mondainonaiwatashitachi.jpg映画「問題のない私たち」 [DVD]

この間まで自分がいじめる側だったのに、いつの間にかいじめられる側になってしまっている。ちょっとのきっかけで、クラスの中の人間相関図が変わってしまう。そういう不安定に揺れ動きつつ日々が過ぎて行く10代の少女達の様子を描いた作品だ。

中学3年生の笹岡澪(黒川芽以)は父親と2人暮らし。学校(女子中)ではクラスのリーダー的存在で、集団で潮崎マリア(美波)をいじめている。周囲は注意しようものなら自分がいじめられることをおそれ、見て見ぬふり。担任教師も、自分の監督責任のなさを問われるのをおそれているのか、全く見ぬふりだ。

澪はいじめによる自殺のニュースを見ても、死ぬぐらいなら歯向かっていけばいいのに……と考えている。

ある日、新谷麻綺(まき・沢尻エリカ)という転校生がやってくる。麻綺をいじめのターゲットにしようと考えた澪だったが、逆に、麻綺をリーダーとして、クラス中からいじめを受けるようになってしまう。立場が逆転してしまったのだ。

いじめられることが辛くても、家庭では、再婚相手として同僚女性を家に連れてくる父親。澪のことなんて、おかまいなしで、自分の結婚問題に舞い上がっていて、話をする雰囲気さえも感じられない。
そんな澪の味方になってくれたのが、以前澪がいじめていた潮崎マリアだった。
一度は死ぬことを考えた澪だったが、力強くいじめに立ち向かううちに、いじめのターゲットは、澪から他へ移ろうとする。澪はいじめの連鎖を断ち切るべく、クラス全員に、いじめから私は抜けると宣言する。

映画冒頭から、プールにマリアを投げ込むシーンが登場、派手ないじめが展開される。この先どのような展開になるのかと、少し胸が苦しいような思いで鑑賞し続ける。
いじめを受けた人の傷は、いじめた側が考えている以上のもののようだ。長い年月が過ぎても心の傷として、深く刻まれている人も少なくないように思う。

この映画に登場する少女達のいじめは、ある断片を上手に切り取ってはいると思うものの、やはりどこか映画的な気もする。みんなが澪のように強く立ち向かって行ければ、いじめを苦にして尊い命を絶ってしまう少年少女が減っていくとは思うけれど、なかなかそうはならないのが現実かもしれない。しかし、この映画にはある側面での解決策を示そうとした真面目な姿勢は伺える。

生徒間のいじめが解決して、みんなで海に出かけて遊ぶシーンは、どの子もとても可愛らしく、本当に楽しそうだ。

夏休みが終わり、澪は担任教師・加藤茜(野波麻帆)がコンビニで万引きするのを偶然目撃してしまう。生徒同士のいじめ問題がようやく解決したと思ったのに、澪は今度は担任教師からのいじめに遭う。

最後には、加藤先生の正体が全校生徒の前で暴露され、先生はコンビニにあやまりに行き、平穏な日々が戻ってくるというストーリーなので安心したが、教師のいじめの部分に対する問題解決は、この映画の中では弱いように感じる。
ひとつ気になったのは、この後加藤先生が教師を続けられたのかどうなのか?
現実にこんなことがあったら、今の世の中だったら大問題になり、教師は退職に追い込まれてしまうだろう。

黒川芽以を初めて認識したのは、NHK朝ドラの「風のハルカ」(2005年)、ハルカの妹アスカ役だった。その後、NHK「名曲探偵アマデウス」の響カノン役や、「キキコミ」など、ちょっとコメディっぽい役柄のものしか見ていなかった。
この映画は、2004年2月28日公開とのことだから、上記の作品以前のものだが、クラスのみんなから念仏を唱えられ、笑ったように泣き出すシーンはものすごい迫力だった。
かなりの演技力だと感じたので、他の作品も見てみたいと考えている。
「グミ・チョコレート・パイン」を見てみようかな。

沢尻エリカは、いじめっ子がよく似合っていた。「手紙」も見ているのだけれど(まだレビューが追いついていない)、映画デビューということを考えると、後に演技派女優と呼ばれるのもわかる気がする。
また沢山の作品で、良い演技を見せてもらいたいものです。

美波は初めてこの映画で認識した。とてもキレイで、線の細さと芯の強さが同居していて魅力的だと感じた。マリアの優しさは彼女の演技だったからこそ、際立ったのだと思う。

「いじめ」がテーマだと思うと、なかなか見る気がおきない人もいるとは思うけれど、結末はそれなりにハッピーエンドなので、たくさんの10代の少女の一生懸命な演技を鑑賞する価値は十分にあると思う。

<データ>
監督・脚本:森岡利行
原作:牛田麻希(小説)・木村文(漫画)
挿入歌:「アルイテク・・・」 黒川芽衣
エンディングテーマ:「青いナイフ」 junior size
配給:レジェンド・ピクチャーズ
主な出演 :
笹岡澪(黒川芽以)…中学3年生。クラスのボス的立場。
新谷麻綺(沢尻エリカ)…転校生。
潮崎マリア(美波)…いじめられっ子。後に澪と仲良しになる。
施川瑞希(森絵梨佳)…澪の7年来の親友でクラスメート。
松野綾(小松愛)…澪のクラスメート。
校長(浜田晃)
加藤茜先生(野波麻帆)…澪の担任教師。 
松下桃花(大塚寧々)…澪の父親の再婚相手。澪の義母になる。優しい母親。
笹岡文成(勝村政信)…澪の父親。

2004年2月28日公開/日本/98分
nice!(1)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

仮面学園 [ネタバレ映画レビュー (日本)]

kamengakuen.jpg仮面学園 [DVD]

ここ3年ばかり花粉症になってしまいマスクを手放せない。顔の半分近くもある大きいヤツを、2月〜5月ぐらいの外出時は必ずしている。町中マスクの人が増えているから、恥ずかしいとかは全く感じなくなった。マスクをしている日は、極力化粧もしない。マスクにファンデーションとか口紅とかべったり付くのが気持ち悪いからだ。マスクをしているから、紫外線もあんまり気にならない(…と思う)。

で、「仮面学園」の話なのだけれど、見ていて、仮面をして出かけられたら、何て楽なんだろうって思ったのが、マスクによって現実になっているというわけだ。お店に入っても、マスクをしたまま対応する。昔だったらおそらくありえない。初対面の人に対して、マスクをしたまま対応するのって、普通は相手に失礼だろう。でも花粉症の蔓延よって、それが平気になってしまったというわけだ。

この映画が製作されたころは、町中みんなマスクをかけて歩いているというのは考えられなかったと思う。花粉症がまだまだ浸透しきっていなかったし、数年後にこんなにマスク社会がやってくるなんて、たぶん多くの人は予想していなかったと思う。

いろいろなサイトで『仮面学園』のレビューを見ると結構酷評されているのだけど、私はこういう感じの世界観ってキライじゃない。Vシネマとか、2時間ドラマとかも結構好きだし、チープ感の中にある仮想現実や本物感が、子供のころに見ていたNHKの少年ドラマシリーズに似ているような気がするからだ。

藤原竜也の映画初主演ということだけれど、出番はそれほど多くない。しかし、仮面作家(職人)・堂島暁という、ミステリアスな青年を印象的に演じている。

それにしても出演者のほとんどが演技がうまくない。
もちろんベテラン達は上手なのだけれど、若手のセリフの棒読みなところとか、演技してますという雰囲気とかがものすごい。
ただ、テレビの世界が一般化するにつれて最近のアイドルやタレントさんが芸達者になってしまっただけで、昔はこういう演技をよく見ていたように思うのは、私だけなんだろうか?
とはいっても、2000年の映画なわけだが。作りはアイドル全盛だった1970年〜80年代のような気もしてくる一作だ(決してその時代の作品をバカにしているわけではない)。

テンポの速い作品だ。
この映画は2本立てだったというので、その影響もあるのだろうか。

川村有季と芦原貢の元に、中学時代の同級生・殿村から仮面パーティーへの招待メールが届く。同じ頃、登校拒否をしていた有季の同級生・段田が仮面をつけて登校してくる。
HIROKOというモデルが仮面をつけたことがきっかけで仮面人気が高まったのだ。
しかしおとなしかった段田は仮面をつけることにより、暴力的に変身していく。
気弱な生徒達が仮面をつけ暴力的になっていくという現象は有季の学校だけではなく、全国的に広がり始める。
そんな中、殿村が自殺し、次々と殺人と自殺が起こる。
真犯人をさがすべく、有季はHIROKOが開くファッションショーにモデルとして潜入する。

渡辺いっけい、大杉漣、本田博太郎、麿赤兒。
この4人が勢揃いしているというのが、ものすごい気はする。
みんなうさんくさくて、誰を信じていいのやら、ちょっと混乱してしまうが、4人が4人とも、そこのところをわかりつつ上手に演じているサービス精神あふれる演技は、この映画でも健在だ。

最後は少しだけ切なく、甘酸っぱい感じの終わり方。
ただ、決して期待せずに見たほうがいいと思う。
そうすると意外に面白い……かも?

仮面をつけて学校に行けるっていうのが、ちょっと新しい感覚だと思った。
仮面をつけたり、マスクをかぶって外出することが普通になれば、これはこれでなかなかいいんではないかと考えてしまったりするのだ。人々は自分の仮面を自由に変えることで、変身願望を満たすことができるだろうし、匿名性も保たれる。

ただ素顔が見えないということにおいて、人は本能的に恐怖を感じたり違和感を感じるものだ。子供の頃、着ぐるみがちょっと恐かった。妹に至っては、現在でもTDLとかの着ぐるみが得意というわけではないという。中にどんな人が入っているかがわからないからだというわけだ。

仮面をかぶっているから匿名性が保たれ、周囲から直接的には本音が見えないが、仮面をかぶっているから本音が言える。
それはそのまま現在のインターネット社会にも共通しているテーマのような気がしてくるのだ。

<データ>
原作 : 宗田理「2年A組探偵局 仮面学園殺人事件」(角川文庫)
監督:小松隆志
製作総指揮:原正人
脚本:橋本裕志
撮影:高瀬比呂志
音楽:真魚
主題歌:Do As Infinity「rumble fish」
製作:「仮面学園」製作委員会(角川書店、ホリプロ、東映、アスミック・エースエンタテインメント)
主な出演 :
堂島暁(藤原竜也)…若き仮面作家。モデルTOSHIとしてショーにも出演している。
川村有季(黒須麻耶)…私立光陽館高校2年生。
芦原貢(石垣佑磨)…有季の同級生。
矢場守(渡辺いっけい)…新聞記者。
堂島レイカ(栗山千明)…堂島暁の妹。DAIMONの娘。モデル名はHIROKO。
出口大造(鈴木ヒロミツ)…DAIMONのマネージャー。
城之内雄一郎(大杉漣)…仮面の必要性を語るカウンセラー。
野坂弘美(茂森あゆみ)…有季たちの高校の先生。
水月(小野麻亜矢)…モデル。
段田徹()…有季のクラスメート。登校拒否をしていたが仮面をつけて人が変わる。
鬼頭誠(一条俊)…有季のクラスメート。
菅原刑事(本田博太郎)
DAIMON(麿赤兒)…世界的ファッションデザイナー。
殿村(山田剛)…有季と貢の中学時代の同級生。

笑うことも、泣くことも、ぼくたち は うまく できない。

2000年/日本・東映/90分
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

銀座の恋の物語 [ネタバレ映画レビュー (日本)]

ginkoi.jpg銀座の恋の物語 [DVD]

石原裕次郎といえば「太陽に吠えろ!」だ。
または「西部警察」。
ただ、私はほとんど「西部警察」を見ていないので、やっぱり裕次郎とえば、太陽に吠えろ!」のボス、藤堂俊介なのであった。

「太陽に吠えろ!」にはまっていたのは中学時代だけれど、そのころの私には、彼は本当におっさんにしか見えなかった。
でも「太陽に吠えろ!」のボスを石原裕次郎はなんと38歳から演じていた。
うーむ、意外に若かったのね。
本当に昔の人は落ち着いていたと思う。
まあ親と同じ年齢なのだから、おっさんに見えても無理ないけど。

なので裕次郎の若かりし日の映画を初めて見たときは、そのはつらつとした若さに正直びっくりした。
一応「嵐を呼ぶ男」を初めとして数本は鑑賞している。

で今回、「銀座の恋の物語」をGyaOで初めて見た。

ストーリー的には、銀座が舞台の、そこに住み働いている若い恋人同士が、だんだんと心を通わせていくお話。
途中、ケンカもあり、友情もあり、なんと記憶喪失もあり、ついでにミュージカルの要素も盛り込まれている。

まあ、当時の映画って、とくに昭和30年代の三人娘、美空ひばり、 江利チエミ、雪村いづみが出ている物って、いきなりみんなで歌ったり踊ったりするのがよくあったから、私には全く違和感がなく、むしろ懐かしかった。

なんだか普通ではありえない展開もあり、その辺が近年流行の韓国ドラマちっく。
年輩女性が韓ドラにはまる理由を、この映画を見て再認識した気がしました。
あと、私が子供のころにはまって見ていた、大映ドラマの原型も感じました。
「おくさまは18歳」とか「赤いシリーズ」ね。

この映画が公開されたのは1962(昭和37)年。
今期の朝ドラ「ゲゲゲの女房」と同時代だ。
ゲゲゲの舞台は調布だけれど。
当時の銀座の風景と現在の銀座を比較するのもおもしろい。
銀座4丁目の交差点や松屋通りの看板なんかも出てくるし。

石原裕次郎演じる、画家を目指している伴次郎は、現代美術社という大手の会社からスカウトされているのに、それに応じようとしない。
勤め人になってしまうと、絵への情熱が薄れてしまわないかと不安な気持ちになっているからだ。
しかし恋人である浅岡ルリ子演じるチャコ(秋山久子)は次郎に対して、「私との結婚を考えているなら、安定したお勤めをしてほしい」と願っている。

このあたりの感覚は、現代の恋人たちにも通じるところがあると思う。
舞台や時代は違っても、扱っているのは、男女間における永遠のテーマなのだろう。

結婚の挨拶を次郎の田舎である信州に一緒に行く約束をした夜、急な残業を頼まれたチャコは、一生懸命にミシンをかける。
チャコは銀座屋という一流の洋裁店のお針子で、腕もかなり良いらしい。

20時30分発、長野行きの列車に乗るため新宿駅で待つ次郎の元に、タクシーでかけつけるチャコ。
しかし、間に合いそうもないので、少しでも早く着こうと途中でタクシーを降り、もより駅から電車に乗ろうと道路を渡ろうとしたチャコにトラックが迫ってくる。

で、個人的にツボだったのが、タクシーに乗ったときのチャコのセリフ。

タクシー運転手「車より電車のほうが早いっすよ」
チャコ    「どこでもいいわ、省線の近くで降ろして」

この「省線」という言い方、やっぱり結構一般的だったんだな〜って納得。
現在のJRはこの映画の当時は国鉄。
私の子供時代はよく国電って言っていたものです。
1949年6月1日に日本国有鉄道が発足したので、1962年は国電であるべきなんだけれど、チャコは省線って言っているんですね。

実は明治生まれの私の祖母は、「省線」という言い方をしていたのです。
子供心に省線=国電という図式が私の頭の中にはできあがっていました。
祖母は静岡県の沼津に住んでいたのですが、子供時代に遊びに行って夜布団に入ると、東海道線の列車の警笛の音がよく聞こえたものです。
私の記憶の中にあった警笛の音が、チャコが事故に遭ったシーンのすぐ後、新宿駅を出発する長野行きの列車が鳴らしている音と一緒なんです。

あと、シーンは前後してしまうけれど、屋上のネオンの下で、次郎とチャコが語らうとき、ネオンがジジッっていう音を出しているのだけれど、これが個人的にはとても好き。
ネオンの音なんですよね、あの音。
最近のネオンも、あんな音するのかな?
ネオンの場面は映像も美しいです。

後半、記憶喪失になったチャコに医者(下条正巳)が、麻酔をかけて患者の心を聞くという治療をほどこすシーンがある。
ここで医者が麻酔で眠っているチャコにいくつかの質問をする。
チャコは事故後、小さな洋裁店に勤め、その後デパートに転職したらしいことがわかるのだけれど、洋裁店をやめた理由を「疲れたから」と答えている。
この一言って深いな〜と私はひとり妙に納得したのでした。

残業させられた結果、次郎と会えずに事故に遭い、記憶喪失になってしまったチャコ。
記憶を失っても得意なのは洋裁で、だからミドリヤという小さな洋裁店に勤める。
深層心理の中には次郎が残っているから、いろいろな思いが交錯してしまい、「疲れたから」につながったのかなと。

この映画の浅岡ルリ子の可愛らしさは一見の価値有りです。

あと、もうひとり、江利チエミ演じる刑事関口典子もやっぱりなかなかの存在感。
江利チエミは私の中ではサザエさんの印象が強くコメディエンヌなのですが、この映画では次郎に片思いをしているので、寂しそうな表情も多く、なんだかとっても可愛らしい。

他にも次郎が一緒に住んでいたバンドマンのピアノ弾き、宮本(ジェリー藤尾)。
彼はハーフなのですが、自分のことを「あいのこ」と自嘲気味に言っています。
ある意味懐かしい言葉。
ドラマの中では、宮本が作曲した曲がいい曲なので、次郎とチャコが詩を考えたのが「銀座の恋の物語」という設定になっています。

宮本はおそらくチャコのことを好きなのだけれど、親友・次郎の恋人だから、そのことを口に出せないでいるし、気持ちを抑えている。
だから宮本は気軽に遊べる歌手・マリと関係を持っているのだけれど、マリは宮本を愛しているらしい……というあたりが、なかなか良いのです。

銀座屋のお針子、キン子を演じる和泉雅子が黒縁のメガネっ娘でものすごく可愛いです。
久子のことを「チャコ姉ちゃん」と呼んでいる声も愛らしい。

脇にも懐かしい役者さんがたくさん登場するので一見の価値有りと思います。

2010年6月24日までGyaOで配信予定。

ちなみに国立競技場で2009年7月5日に行われた「石原裕次郎23回忌」の写真はコチラ
密かに石原裕次郎が好きなワタシなのだった。。。

<データ>
監督: 蔵原惟繕
企画: 水の江滝子
脚本: 山田信夫・熊井啓
撮影: 間宮義雄
音楽: 鏑木創
美術: 松山崇
編集: 鈴木晄
録音: 福島信雅
スチール: 井本俊康
照明: 藤林甲
主な出演:
伴次郎(石原裕次郎)…一流画家を目差す絵描きの青年。

宮本修二(ジェリー藤尾)…バンドのピアノ弾き。

秋山久子(浅丘ルリ子)…伴次郎の恋人。愛称チャコ。銀座の一流洋裁店「銀座屋」のお針子。空襲で両親を亡くしている。記憶を失って銀座のデパートのアナウンス部にいるときの名前は井沢良子。

関口典子(江利チエミ)…実は女刑事。伴次郎に思いを寄せるようになる。

春山(清水将夫)…画廊「春山堂」のご主人。

香秀社社長・沢村史郎(深江章喜)…詐欺師。銀座を食い物にしている「いかさま五郎」と呼ばれている。本名不明。

お松(清川虹子)…屋台の焼き芋屋。チャコを本当の娘のように思っている。

武さん(高品格)…屋台のたこ焼き屋・蛸八のご主人。

柳井樹理・マリ(牧村旬子)…マリというのが芸名? 宮本の彼女。

源六(河上信夫)…伴次郎の階下に住む人力車の車夫。

秀子・マギーママ(三崎千恵子)…クラブのママ。宮本のバンドやマリも出演している。

キン子(和泉雅子)…「銀座屋」のお針子。チャコを姉のように慕っている。

銀座屋のマダム(南風洋子)…銀座屋の店主。

須藤女史(新井麗子)…チャコたちの上司。洋裁部の責任者。

橋本(守屋徹)…宮本のバンドでベースを担当。

尾形(織田俊彦)…宮本のバンドでサックスを担当。

ドラマー(石崎克巳)…宮本のバンドでドラムを担当。

司会者(広瀬優)…クラブの司会者。

弘美(千代侑子)…銀座のズベ公。銀座の公衆便所と、クラブのシーンに登場。

千枝(金井克予)…銀座のズベ公。銀座の公衆便所と、クラブのシーンに登場。
★★★「他人の関係」の金井克子さんとは別人なんですね。それにしてもズベ公って、今でも通じるのかしら。。。不良娘っていう感じですね。

新人歌手・佐和ララ子(葵真木子)…歌う前にトイレに行き、代わりに関口典子が舞台に上がることになってしまう。

芸者(星ナオミ)…映画冒頭に出てくる人力車に乗っている芸者。星ナオミはクラブのホステスとしても登場。

トランペットの青年(小島忠夫)

佐藤(木浦佑三)…伴次郎の絵描き仲間。

医者(下絛正巳)…チャコの記憶喪失の治療にあたる。

男A(神山勝)…酒の密売組織の男。

男B(古田祥)…酒の密売組織の男。

男C(林茂朗)…酒の密売組織の男。

刑事(山之辺潤一)…酒の密売組織を捜査している。

刑事(深水吉衛)…酒の密売組織を捜査している。関口典子の上司。

月賦屋(峰三平)…宮本が購入したピアノの月賦屋。

月賦屋の部下(紀原土耕)

吉本(花村典昌)…現代美術社の社員。

清水部長(松下達夫)…現代美術社の部長。

東北弁の巡査(井上昭文)…次郎と宮本が沢村の会社の場所を聞いた銀座の交番に勤務。

松屋デパートの店員(重盛輝江)…チャコがアナウンス部に勤めた松屋デパートの同僚。

下宿屋のおばさん(鈴村益代)…記憶を失ったチャコが住んでいた下宿のおばさん。

タクシーの運転手(高緒弘志)…ツバメタクシーの運転手。

1962年/日本・日活/94分
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

春との旅 [ネタバレ映画レビュー (日本)]

haru_tono_tabi.jpg春との旅 (単行本) 小林 政広 (著)


実はこの映画は昨年12月7日の完成披露試写会で鑑賞した。
もう数ヶ月が経過したのに、鑑賞したときの感動はいまだに続いている。

この映画で恥ずかしながら私は初めて仲代達矢のすごさを知った。
これまでは大御所というイメージしかなく、その演技に触れることもなく過ごしてきた。

仲代達矢の演技を初めて見たのはもう30年以上も前のことだ。
NHK大河ドラマの「新平家物語」で、平清盛を演じていた。
もちろんそのころの私はまだ子供で、生まれて初めて見た大河がこの作品だった。

1980年の「影武者」も映画館で見た。
20代前半のころに、黒沢明監督映画を何本も鑑賞したが、うまい俳優さんだと思っただけで、ストーリーの中に引き込まれたにすぎなかった。
2007年の大河「風林火山」では胡桃を掌でごりごりする癖のある武田信虎が印象的だった。

そして今回の「春との旅」。。。

仲代達矢は決して老漁師には見えない。
ステテコ姿だって似合っているとは思えない。
でも、見えなくても似合っていなくてもいいのだ。
仲代達矢の演じる忠男の職業はこのストーリーにはあまり問題ではないからだ。

忠男が親戚を訪ね会話する姿に、人は自分の現在や将来を垣間見ることができるのではないだろうか。
仲代達矢は忠男になりきっていながら、忠男そのものではなく、人生の語り部として忠男を演じているように思える。
スクリーン上で忠男が語る姿は、見る人ひとりひとりの人生の問題を語ってくれているような気がしてくるのだ。

仲代達矢という俳優は、それだけ普遍的なものを演じることができる俳優だということに初めて気づかされた。
「本当の演技」ってこういうものなのではないだろうかって、映画鑑賞中、何度も感じた。

こんなことは既に大勢の人が知っていることなんだろうと思うけれど、親と同世代の俳優である仲代達矢に触れる機会は、正直そうそうなかったというのが本当のところだ。

例えば演劇が好きならば、彼の演技をもっと見ていただろう。
しかし、私はたまーに演劇鑑賞をするぐらいで、それも文学座のお芝居が多いので、彼の生舞台を鑑賞したことはまだない。

映画を見てこんなことを感じたのは初めてのことだったので、最初は正直戸惑った。
それでも、仲代達矢という役者が、普遍的な世界観を見せてくれたことに、私はとても幸せな気持ちになれたのだ。

忠男と一緒に旅する孫娘の春は徳永えりが演じている。
彼女が出演した「フラガール」は映画館で見た。
春は歩き方がとても可愛い。
そもそもこの映画は忠男にしても、春にしても、歩き方に特徴がある。
そして、春はセリフが少ないと思う。
しかし演技はかなり印象的だ。

周りも芸達者な役者さんばかりで、安心して見ることができる。

泣けるのに心が温まる。
「春との旅」はそんな映画だ。

まだ上映されて間もないので、ストーリーは書かない。
でも、多くの本物の役者がそろった映画だと思う。
実のところ、申し訳ないことに、全く期待せずに試写会に出かけたのだが、機会を見つけて再び鑑賞したいと考えている。

自分の年齢なりに、投影するキャラクターも変わってくるだろうし、感じ方も変わってくるだろうと感じさせる映画だからだ。
そういうことを感じさせるこの映画は、時代に関係なく、世代に関係なく見ることができる、名作だと思うのだ。

<データ>
原作・脚本・監督: 小林政広
音楽: 佐久間順平
主な出演:
忠男(仲代達矢)…老漁師
春(徳永えり)…忠男の孫娘
金本重男(大滝秀治)…忠男の兄
金本恵子(菅井きん)…兄嫁
木下(小林薫)…愛子の隣人
清水愛子(田中裕子)…刑務所に入っている忠男の末弟の内縁の妻
市川茂子(淡島千景)…忠男の姉。旅館を経営している。
中井道男(柄本明)…忠男の弟
中井明子(美保純)…道男の妻
津田伸子(戸田菜穂)…春の父親の再婚相手
津田真一(香川照之)…春の父親

2010年/日本/134分
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

大泉洋が滑ってない「アフタースクール」 [ネタバレ映画レビュー (日本)]


アフタースクール [DVD]

アフタースクール [DVD]

  • 出版社/メーカー: メディアファクトリー
  • メディア: DVD



アフタースクール」DVDで鑑賞したのは二度目。
とにかく大泉洋ちゃんが滑ってない!!という一言に尽きるのではないか。

我が家は「水曜どうでしょう」が大好きで、手帳もどうでちょうだし、一生どうでしょうしますのつもりだったりするわけなのだけれど、一生懸命見てあげて(押しつけがましいが)いるものの、大泉洋のドラマは、今までいまひとついただけなかった。
ミスター(鈴井貴之)関係の映画とか、シムソンズや昔々のパコダテ人とかはまあよかったけれど。

イタいヤツを演じたらいいのだけれど、少々格好いい役だと滑りまくって、痛々しくてみていられなかったというのが、これまでの大泉洋だった。
まあ、あくまでも私の主観だけれど。

一生懸命に見てあげたい(←これがたぶんファン心理だと思う)のだけれど、バラエティでも、ああ〜〜〜と思い、チャンネルを変えてしまう。
ドラマでも1話は見るけれど、そのあと見られない。
正直、滑って浮いて痛々しい大泉洋など見たくなかった……のだ。

しかし、「アフタースクール」は違っていた。
ここまで大泉洋の良さを引き出せる、内田けんじ監督はただ者ではない。

しかし特典を見たところ、そこにはどうでしょうで知っている「いつもの大泉洋」がいた。
……ということは、演出の素晴らしさだったのではないかな?
やっぱり???

ストーリーもかなり複雑?で、どこからどこまでが、敵なのか味方なのか、正義なのか悪なのか、最後まで全くわからない。
所々にちりばめられたごくごく小さな伏線が、後から生きてきて、最後まであきさせずに見せてしまう。

さて、初めて「水曜どうでしょう」を知ったのは、「ユーコン川160キロ」でだった。
ネットで無料公開されていた動画を夫からすすめられ見たのだが、大泉洋の最初の印象は「なんだ、このエラそーなヤツは?」というものだった。
しかし、その後見れば見るほどはまり、
苦しいときにも「どうでしょう」、
悲しいときにも「どうでしょう」、
辛いときにも「どうでしょう」、
時間をもてあましているときにも「どうでしょう」、
……というのが、我が家のリズムになった。

だから、大泉洋がドラマで主演した「おかしなふたり」も楽しみにしていたし……、しかし結果は……!
というわけ。

「アフタースクール」では、脇を固めている役者がとてもいい。
佐々木蔵之介と堺雅人という今や超人気実力俳優の「NHK朝ドラ オードリー」コンビ。
佐々木蔵之介を「オードリー」で初めて見たときは、その演技から目が離せなくなってしまった。また、ベテランなんだか、新人なんだかわからない、奇妙に印象深い役者さんだなと感じた。
堺雅人のソフトな演技も印象的だった。
このふたりはともに1999年の「女医」にも出ていたそうなのだけれど、どこに出ていたのだろう?
とても良いドラマで好きだったけれど、全く覚えていない。
今回もこのふたりの演技は見事。
個人的には、木村役の堺雅人が良かった。
佐々木蔵之介の微妙な奇妙なうさんくささは、この人なりの持ち味だと思う。

女優陣は常盤貴子に田畑智子。
常盤貴子はやっぱりきれいだし、個人的に大好きな田畑智子が効いています。
それに大御所、伊武雅刀だって、山本圭だって出ている。
でも、それだけでは、これまでの大泉洋なら、滑りまくって終わっていたに違いない…と思うのだ。

今回はテンポのよさと、抑えた普通の演技がとても自然で、安心して鑑賞できた。
特典映像を見ると、その秘密がよくわかる。
監督がOKを出せば、そのシーンはいいのだという、役者たちの安心感と信頼。
そういうものが重なり合って、複雑なストーリーでありながら、ちょっと笑わせ、ちょっと切なく、そしてなんだか格好いい作品に仕上がっているのだと思う。
使い方さえ間違わなければ、大泉洋は本当に良い役者なのだということが認識できると思う。

あと印象に残ったのは、ムロツヨシ
「キキコミ」での印象が強かったので、この刑事役はすごい。全くの別人。
というか、「キキコミ」の方が、ちょっと違った役どころだったのかもしれないが。
特典を見ると、ムロツヨシが目立っているのです、とても。
いい意味で周囲に盛り上げてもらっているという感じ。
私は「キキコミ」を見るまで、彼のことを認識していなかったのだが、「サマータイムマシン・ブルース」にも出ていたのですね。
今度見直してみましょう。

あと、尾上寛之。
今回は佐々木蔵之介演じる北沢のアダルトショップの店員役。
「虹の女神」などで見せる真面目な友人役とは全く違っていて驚かされます。
結構演技の幅が広いのでしょう。

で、大泉洋に話は戻るのだけれど、2009年7〜9月期にやっていた「赤鼻のセンセイ」は結構よかったのではないかと思う。
イタい滑ったヤツをやらせれば、もともと滑っているわけだから、プラスに転じるという見事な図式が成立したのだと思う。
あのドラマは、神木隆之介、須賀健太、というふたりの大物子役(まだ子役かな?)にも泣かされたので、助かったというところもあるのではないかと思うけれど、でも、この「アフタースクール」での経験が、役者としての大泉洋にかなりプラスに働いたハズなのでは?

2010年は、NHKの大河ドラマ「龍馬伝」に満を持して登場する大泉洋。
近藤長次郎を演じるという。
近藤長次郎は29歳という若さで切腹させられてしまうそうだが。。。
「アフタースクール」では、大泉演じる神野の同僚教師を演じた音尾琢真も望月亀弥太役で登場するらしいので、今から楽しみ。
既にNHK金曜時代劇「秘太刀 馬の骨」で怪演した音尾琢真には全く心配していないのだが、余計なお節介だと思いつつ、お願い、洋ちゃん、滑らないで〜〜と願い続けている今日この頃なのだ。

<データ>
★★注意: 主な出演を読むとネタバレします★★
監督・脚本: 内田けんじ
主な出演:
神野良太郎(大泉洋)…中学校の教師
北沢雅之(佐々木蔵之介)…アダルトショップを経営しながら探偵業もしている
木村一樹(堺雅人)…神野の中学時代の同級生でサラリーマン
謎の女(田畑智子)…神野久美子 神野の妹で警察官
佐野美紀(常盤貴子)…神野と北沢の中学時代の同級生 片岡の店でホステスをしていた
大黒(北見敏之)…木村の勤めている会社の社長
片岡(伊武雅刀)…ヤクザの親分
郷田捜査官(山本圭)…捜査の指揮をとっている
江藤議員(大石吾朗)…保守党の議員だが、実は最後にどんでん返しが
マナブ(尾上寛之)…北沢のショップの店員
甲斐捜査官(ムロツヨシ)…久美子の同僚
神野の同僚教師(音尾琢真)…職員室で北沢に質問される
メグ(桃生亜希子)…美紀と同じお店に勤めていたが、今はビデオ鑑賞店で風俗嬢をしている

2007年/日本/102分
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

雨の翼 [ネタバレ映画レビュー (日本)]


雨の翼 [DVD]

雨の翼 [DVD]

  • 出版社/メーカー: ポニーキャニオン
  • メディア: DVD



知り合いからずーっと薦められていて、ようやく鑑賞。
薦めてくれたのは、同年代の男性だ。
私も夫もそしてこの男性も、熊澤尚人監督の「虹の女神~Rainbow Song~」に感動し、映画とDVDを何度も見直したのが二年前ぐらいのこと。

この景色、たぶん知っている。
見始めてすぐにそう感じた。
この海浜地区に私は長く住んでいた。
京葉線から見える稲毛海岸から千葉みなとにかけての風景や、スクーターで走り回った海岸線。
夕方の海のきらめきや、空の広さ。
夕日を浴びる団地やマンションの建物。

「あれ、たぶん千葉みなとのポートタワーじゃないかな」

屋上シーンですぐに目についた、屋上左手に見える高い建物。

「そしてあれが稲毛海浜公園にある温室」

屋上シーンで中央に見える、ガラス張りの円形の建物だ。

「この位置から考えるに、この屋上、たぶん市立稲毛高校じゃないかな」

エンドロールのクレジットに、しっかり市立稲毛高校の文字を発見しました。

高校校内の様子も、私が通っていた高校と似通っていて、高校時代のことを懐かしく思い出そうとしていたところ……

「こんな雲が出ている日に、雨なんて絶対に降らない」

DVDを見始めてまもなく、横で一緒に見ていた夫がぼそっとそう言った。

「そうかもしれないけれど、映画なんだから」

と、私。

「いや、小作品だからこそ、きちんと作らなければ。
 この映画だと雨がやってくる空気感を肌で感じることができない。
 雨が重要なんだから、雨がやってくるときの匂いとか、感覚を感じさせるようでなければ駄目でしょ。
 ちょっとでも雨のことや雲のことを研究して作っていれば、こんな風にはならないし、空気感が出るはず。

 まあ、スケジュールの都合もあるんだろうけれど……。
 そもそも、冬にあんなところでロケをすることが間違い。
 あそこは冬は滅多に雨なんて降らない。

 さしずめ、行間が広すぎて読むことかできない、そんな映画」

つまり、こういうことだ。
雨が絶対に降るはずのない雲を映し、直後に雨が降ってくるシーンがあったというのだ。
最初の方、屋上で陽介(石田卓也)が透花(藤井美菜)目撃する辺りのシーンだったと思うのだけれど、夫はここで、興醒めしてしまったらしい。

「雨」がテーマになっている映画なのだからこそ、そういう一見どうでもいいと思われがちなところでも、きちんとリサーチして作らないと、ましてやちょっとのリサーチですむことをせずに作ってしまったというところが、本物感を失わせてしまった、残念な映画ということらしい。

もちろんスケジュールの都合もあるのだろうけれど、雲だけのシーンなわけだから、その後、雨がやってくる前の雲を入れることもできたはずだと言われれば、そうかもしれないとも思う。

屋上のシーンは夕景がきれいで、見ていて10代のころを思い出させて、ちょっと感傷的な気分に浸れるけれど、その雲や雨の映し方で、もっと完成度が上がって、本物感が出たはずだというのだ。

この映画の35分という時間をどう考えるかだけれど、昔見ていたアニメも特撮も、正味25分ぐらいしかなかったわけで、それなのに異常に満足度が高かった。
正直「雨の翼」は結構あっけない感じがした。
もちろん、登場人物も少なく、予算だってかなり低く作られているだろう。
しかし、もしかすると、細かい部分の本物感をどこかではしょってしまった結果が、よりあっけない作品へとつながってしまったのかもしれない。

でも、千葉の海浜地区の夕景はとても見事。
夕焼けを見ながら、ベランダで歌を歌っていた自分の少女時代を懐かしく思い出させてくれた。
そういう意味で、私にとっては、それなりに意味のある映画だったと思う。
35分という長さなので、軽く見られるし、後味も良い。
また、登場人物は全員好演していると思う。
先生にほのかな恋心を抱き始めたり、陽介にだんだんと心を開いていく透花の様子などは、素直に綴られている。

それにしても、私にこの映画を薦めてくれたカレは、一体どこに強く感動したのだろう?

2009,10,23追記
その後、映画を薦めてくれたカレに聞いてみました。
好きなのは「空気感」だそうです。
確かに、淡々としたセリフの中に、静かに育っていく愛情や信頼がかいまみえるし、それを屋上からの風景や雨とで、場面を上手につなげながら表現していたな……と、納得いたしました。

<データ>
監督 : 熊澤尚人
脚本 : まなべゆきこ
原案 : 竹尾麻希
主な出演:
池上透花(藤井美菜)……高校2年生。ちょっといじめられているらしい。
松前陽介(石田卓也)……透花にほのかな恋心を抱き始める同級生。
紀野幸也(眞島秀和)……亡くなってしまった教師。
山下修(郭智博)……陽介の友人。

2008年2月9日公開/日本/35分
nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

神様のパズル [ネタバレ映画レビュー (日本)]


神様のパズル [DVD]

神様のパズル [DVD]

  • 出版社/メーカー: TOEI COMPANY,LTD.(TOE)(D)
  • メディア: DVD



青春ラブコメSFファンタジー?
いろいろあり得ないなと思う部分はあるものの、遊び心がいっぱいだと思います。
深く考えず、勢いとノリで見ると楽しいのではないかな。

で、これはきっと大きな画面で見るほうがおもしろい映画なんだろうね。
第一小さい画面だと「無限」の壮大さや、なごみ感を誘う田んぼ景色や、インド……そんなものの雰囲気が味わえない。

インドシーンが無駄という感想もあるようだけれど、ガンジス川の流れがあることで、淡々とした悠久の時間の流れというものがよく現れているようにも思う。
どういうことかというと、時間の流れをとらえるとき、普通はどうしても自分中心で考えがちなのだけれど、他人にはその人なりの時間があるわけだ。つまり今、世界の別の場所で時間を過ごしている人が大勢いるわけで、そんな当たり前のことが映像として表現され、感じさせてくれているような気がしたのだ。

地球は宇宙空間に浮かんでいるわけだから、その地球にくっついている、田んぼだって、教室だって、宇宙空間なのよね。。。なんてことを考えたりしてしまう、妙にテンポのよい映画なのでした。

サラカ(谷村美月)のジャージスタイルがなかなかのものです。演技も含めて、彼女をいろいろな意味で見直しました。口調といい、笑わない表情といい、美胸といい、一見の価値ありと思います。

基一(もとかず・市原隼人)はありえない妄想シーンが多いのですが、それでも何だか勢いに押されて見てしまうという感じなのです。

白鳥(松本莉緒)も熱演しているし、現代の大学生ぐらいの女性の恋愛観を、出演時間が少ない割に、上手に表現していると思う。

いろいろ語るよりも、まあ見て楽しんでくださいっていう、そんな映画だと思います。

ただ、最後のほうの相理(あいり・黄川田将也)の行動には何だか納得がいかなかったなぁ。原作を読んでいないので、何とも言えませんが……ね。

特典ディスクがなかなかおもしろかったです。
ひもで縛られるシーン、映画だと本当にちょっとだけのシーン。
それにあんな時間をかけて撮影するところが、映画のおもしろさなんだろうなって思いました。
また、エグゼクティブ・プロデューサーの角川春樹がその健在ぶりを示しているように思います。昔の勢いはないものの、この映画を制作するきっかけが獄中で読んだこの本だった…というお話とか、市原隼人との無重力体験とか。
角川映画で育った世代にも、なかなか楽しく鑑賞できるのではと……。
まあ見る人によっては、期待しなければ、それなりに面白いっていう感じかもしれませんが。
私的にはアリでしたね。

それにしても、「無限」って結局何だったんだ?
そんな感じを抱かせちゃう、すごさがありますね。
まあ、国家予算を使って馬鹿みたいなことをしている例は現実社会にもたくさんあるわけで、これはそんなことを皮肉っているのかもしれませんよね。

<データ>
監督:三池崇史
エグゼクティブ・プロデューサー:角川春樹
脚本:NAKA雅MURA
音楽:鳥山雄司
主題歌:ASUKA「神様のパズル」

主な出演
綿貫基一/綿貫喜一:市原隼人…基一は寿司屋でロッカー。喜一は大学生。双子。
ホミズサラカ:谷村美月…人工授精で生まれた天才少女。16歳。飛び級で大学生になる。
サラカの母:若村麻由美(特別出演)…サラカに彼女なりの愛情を注いでいると考えられる。どうしてあんな大きなお屋敷に住んでいるのかちょっと謎。
白鳥:松本莉緒…鳩村ゼミの学生。基一憧れの人。
佐倉:田中幸太朗…鳩村ゼミの学生。喜一ばかりではなくもともと基一とも知り合いのよう。
須藤:岩尾望…鳩村ゼミの学生。
相理:黄川田将也…鳩村ゼミの学生。妙に理屈っぽい大学院生。白鳥の彼。
鳩村:石田ゆり子…教授らしく見えませんが、「無限」ができちゃう時代なのでこういう設定もありかも。
村上:國村隼…鳩村より偉い教授。
橋詰:笹野高史…聴講生の老人。基一と一緒に山田さんのところにバイトに行く。
山田:李麗仙…農家の女主人。
権田原:六平直政…基一が働いている寿司屋の主人。
電力流通本部長:遠藤憲一
体育会系の学生:小島よしお…ただ大学構内を走り抜けるだけだったよーな?

2008年/東映/134分



神様のパズル (ハルキ文庫)

神様のパズル (ハルキ文庫)

  • 作者: 機本 伸司
  • 出版社/メーカー: 角川春樹事務所
  • 発売日: 2006/05
  • メディア: 文庫



nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

「グーグーだって猫である」は猫と一緒に見たくなっちゃう映画 [ネタバレ映画レビュー (日本)]


グーグーだって猫である ニャンダフル・ディスク付き(初回限定特別版) [DVD]

グーグーだって猫である ニャンダフル・ディスク付き(初回限定特別版) [DVD]

  • 出版社/メーカー: 角川エンタテインメント
  • メディア: DVD



映画館には行きそびれてしまったので、DVD発売を楽しみにしていた「グーグーだって猫である」。
大島弓子さんの原作漫画を読んだときから楽しみにしていたのですが、映画にも淡々とした日常が綴られていて、私はこういう世界観って好き。

猫が好きな人はホント楽しめると思う。
だって我が家の猫、ハルちゃん(2009年3月4日でちょうど一歳になります〜)が画面に釘付けになっちゃうシーンがあったんですよ。

鑑賞中、我が家の可愛い子ちゃんを抱っこしながら見たくなっちゃって、寝ていたハルちゃんをわざわざ連れてきて、お膝に乗せながら一緒に鑑賞。
小泉今日子さんが、グーグーと戯れているシーンを見ていると、自分もそうしたくなっちゃったのです。
そうしたところ……
猫の鳴き声が聞こえたり、井の頭公園をグーグーが走るシーンのときは、ハルちゃんは身を乗り出し、じーっと画面に釘付けになっておりました。
グーグーが走る様子に合わせて、首を左右に動かしている姿は可愛いったらなかったです。
でも、自分の膝の上に載せているものだから、ハルちゃんの後ろ頭姿しか見えないというのが、何とも……でしたが。
一緒に干渉していたダーリンに、「ハルちゃん、画面見てる?」って聞きながらの干渉になってしまいました。

それにしても、猫たちの演技力がすごい!!
もちろん、猫たちが演技してくれるまで待っていた出演者やスタッフもすごいと思います。

去勢手術を受けなければならないグーグーが脱走して、白いメス猫を追いかけるシーンがあるのだけれど、よくあんなにきちんと走れるなぁって、大感心しました。
もちろん綿密な撮影計画があるのでしょうけれど、見ている間はそんなこと感じさせないのが◎。

映画中、猫のタロットカードが出てくるのだけれど、これ、私、愛用しています。
Tarot Of White Catsといって、白猫が主役なんですが、面白いのは、愚者のカードがなぜか犬だったりするのです。ペットの占いのとき、特に猫を占うときによく使っています。恋愛のことを占うときにもなかなか良いですよ。
以前、東急ハンズで一目惚れして購入しました。

猫が擬人化されるという手法は、ご存じのように大島弓子漫画である「綿の国星」に登場しますが、今回は亡きサバ(大後寿々花)が人間のかたちをして麻子先生と会話するシーンがある。サバは歳を取って死ぬわけだから、実際には大後寿々花のように若いはずもないのだけれど、幻想という意味ではなかなか良かった。猫が成長して、飼い主の歳を超えてしまう日、そんな日が我が家の猫が長生きしてくれれば、いつかはやってくるのだという事実に気づかされた。大後寿々花の淡々とした優しい語り口が、呪文のように染みこんで来て、わかっていてもしっかりと認識していなかった事実を、自然にわからせてくれるのです。

それにしても、鼻歌歌手(←特典ディスク中、細野晴臣さんとの対談でご自分で言っております)、小泉今日子はすごい。
KYON2はアイドル時代から大好きだったのですが、「渚のハイカラ人魚」とか、その他いろいろ……、今回のテーマ曲、細野さんとのデュエットは力を抜いて聞けて、良いです。
自然体に可愛く歳を取ったな~って思います。

上野樹里ちゃんも良い味出してます(樹里ちゃんが出ている映画で、「虹の女神」というのがあるのですが、これがものすごーく好き。いずれ感想をアップしようとは考えているのですが……)で、猫とのツーショットシーンがあって、そういう樹里ちゃんはものすごくかわいい。

我が家では昨年六月から、ひょんなことで数年ぶりに猫との生活を始めたわけだけれど、いまやいることがあたりまえ。手もかかるし、だけどかわいい。時には話しかけてみたり、踊ったり歌ったりしてあげたり、、、なんてことをしているわけですが、そういうことが毎日毎日淡々と、でも楽しく過ぎていく。そんな猫との幸せ生活を改めて自覚させてくれる映画です。

この映画を見て、命には限りがあるけれど、生きている幸せをかみしめながら日々を過ごしたいなぁって、素直に感じましたよ。

犬童一心監督作品を見たのは「金髪の草原」に続いて2作目。
普通はもっと違う作品を見ているようにも我ながら思うけれど。「タッチ」とか「ジョゼと虎と魚たち」とか…ね。
考えてみれば「金髪の草原」も大島弓子原作なんだよね。

そうそう、井の頭公園って「いのがしら」じゃなくって「いのかしら」なんですよね。
井の頭線も、「いのかしら」。
その昔、ちょっと調べる必要があって、公園にどっちが正しいか問い合わせたことがあります。それまでは「いのがしら」だと思っていました。まあ、発音するときは、「が」の方が発音しやすいかもって思いますけどね。

〈データ〉
監督・脚本:犬童一心
原作: 大島弓子
音楽: 細野晴臣
配給:アスミック・エース

主な出演:
小島麻子(小泉今日子)…吉祥寺に住む漫画家。サバという猫が亡くなりグーグーと暮らし始める。
ナオミ(上野樹里)…麻子のアシスタント。もともと小島麻子の漫画のファンだった。
麻子のアシスタントの三人組(森三中)
沢村青自(加瀬亮)…麻子先生の友人? 医者。
中央特快・マモル(林直次郎/平川地一丁目)…バンド活動をしている。ナオミの彼?
中央特快・タツヤ(伊阪達也)
ポール・ウェインパーグ(マーティ・フリードマン)…英会話教室の講師。
サバ(大後寿々花)…麻子が飼っていた猫。
山本泰助(小林亜星)…ナオミとマモルがバイトしているリサイクル・アンティーク家具屋の主人。
編集長・近藤(田中哲司)…以前麻子先生に思いをよせていたらしいが、あっさり結婚してしまったらしい。
梶原(でんでん)…井の頭動物園の飼育係。
小林(山本浩司・読み仮名は「やまもとひろし」)…梶原の部下。麻子先生のファンらしい。
麻子の母(松原智恵子)
UMEZU氏(楳図かずお)…漫画家。

2008年/日本/116分


グーグーだって猫である 小説版 (角川文庫)

グーグーだって猫である 小説版 (角川文庫)

  • 作者: 犬童 一心
  • 出版社/メーカー: 角川グループパブリッシング
  • 発売日: 2008/07/25
  • メディア: 文庫





グーグーだって猫である

グーグーだって猫である

  • 作者: 大島 弓子
  • 出版社/メーカー: 角川書店
  • 発売日: 2000/07
  • メディア: 単行本(ソフトカバー)



nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画

自虐の詩 [ネタバレ映画レビュー (日本)]


自虐の詩 プレミアム・エディション [DVD]

自虐の詩 プレミアム・エディション [DVD]

  • 出版社/メーカー: ジェネオン エンタテインメント
  • メディア: DVD


こともあろうに、特典映像から見てしまった私。
この映画について全く知らなかったので、まずは予習気分だったともいえるけれど。
で、ちゃぶ台返しに高まる期待。
セットに高まる期待。

でも本編見たら、ちゃぶ台返しについては期待が大きすぎたかも。
私の世代はちゃぶ台返しといえば、一徹父ちゃんだ(by 巨人の星)。
それとも寺内貫太郎一家か?
セットはなかなかすごかったです。

世の中自分から不幸を引き寄せる体質の人っていると思うのだけれど、この幸江がまさにそうだ。
中谷美紀の語りがなかなか良い。
不幸の中の幸せっていう感じがよく出ていると思います。
そして無口な阿部寛がとにかく良い。
台詞はほとんどないんじゃないかな?
何言しゃべったんだろう?
でもその存在感はものすごい。

今まで、阿部寛の出ている映画やドラマは、「TRICK」とか、「結婚できない男」とか、「大帝の剣(←これは別の意味でものすごい映画だった…)」とか、割と軽めのコメディタッチのものばかり見ていた。「自虐の詩」もある意味コメディなんだろうけれど、演技はコメディじゃなくて、シリアスだったなぁ。

夫婦にはいろいろな愛の形があって、幸江とイサオのような愛があっていいんだと妙に納得できる。
周囲に何を言われても、イサオを信じる幸江には幸せになってほしいと感じたものだ。
ふたりが出会った頃、幸江にとって、イサオは本当に苦しいときにそこから連れ出してくれた人だったわけだし、イサオにとっても、彼女がいることが日々の支えだったんだろうなって感じる。

普通は一緒になって時が流れると、愛だけではうまく行かないことも出てくるし、ふたりの関係も揺らいでいくものだ。
でも揺らがない幸江。これがすごいのだ。
この幸江のイサオへの思いが、全編を通じて流れているので、安心して鑑賞することができたのだと思う。
そして見ているうちに、イサオも実は揺らいでいないのだというのがわかってくる。

だからエンドロール後のシーンは嬉しかった。
ああいうのを蛇足だと考え、好きではない人もいると思うけれど、私的には「見たいシーン」を見ることができたように思う。

あさひ屋のマスターと幸江の父親(西田敏行)との掛け合いは妙におかしかった。
マスター役の遠藤憲一さんは昨年の秋、道を歩いていて、なぜかすれ違ったことがあるのだけれど、背が高くてスラリとしていて、でも気取った感じもなく、かっこうよかったです。
白いTシャツにジーパンに帽子というラフなスタイルだったけど、白いTシャツって着こなすのはなかなか難しいと思うので、さすが俳優さんだと感じました。

そうそう、少女時代の熊本さんの存在感は素晴らしかった。
幸江(中学生時代の幸江・岡珠希)も熊本さん(中学生時代の熊本さん・丸岡知恵)も、少女時代の役者さんがものすごくよくって、電車での別れのシーンはほろりとしてしまった。一方で笑えるシーンも多かったし。
カルーセル麻紀にもなごまされます。とっても素敵なおばちゃんっぷり。あまりにはまりすぎて、他の配役が考えられない感じでした。

印象に残ったシーンは、イサオと一緒になる前の幸江が、アパートの一室で幻覚を見たりするシーン。ネオンの光が部屋の中に差し込んでいる感じがなかなかでした。
あとはやっぱり最終シーン。幸江とイサオの優しい表情に心温まりました。

この作品、とっても救いがあるし、ささやかな幸せを夢見ながら、みんな頑張って生きているんだなっていうふうに感じます。
堤幸彦監督作品だというのは、見ているとすぐにわかります。
とにかくテンポというか、間、あと映画の色調が堤作品です。
何も見るものがないときには見てみると、結構楽しめる作品だと思った次第です。

〈データ〉
原作:業田良家
監督:堤幸彦
脚本:関えり香 里中静流
製作総指揮:迫本淳一
音楽:澤野弘之
美術:相馬直樹
主な出演:
森田幸江(中谷美紀)…働かない内縁の夫・イサオを支えるため、定職屋でパートをしている。イサオといれば幸せらしい。
葉山イサオ(阿部寛)…働かず幸江の稼いだ金を酒やギャンブルに使う。気に入らないことがあるとちゃぶ台をひっくり返す。
森田家康(西田敏行)…幸江の父親。
あさひ屋マスター(遠藤憲一)…幸江が働く定職屋のマスター。幸江に惚れている。
熊本さん(アジャ・コング)…幸江の本当の友人。
福本小春(カルーセル麻紀…幸江とイサオが住むアパートの階下に住むおばちゃん。幸江の悩み相談に乗ったりなど、何かと面倒見が良い。
組長(竜雷太)…イサオを見込んで組に誘う。イサオの亡き父親とも知り合いだったらしい。
2007年/松竹/115分


nice!(0)  コメント(0)  トラックバック(0) 
共通テーマ:映画
前の10件 | - ネタバレ映画レビュー (日本) ブログトップ

この広告は前回の更新から一定期間経過したブログに表示されています。更新すると自動で解除されます。