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銀座の恋の物語 [ネタバレ映画レビュー (日本)]

ginkoi.jpg銀座の恋の物語 [DVD]

石原裕次郎といえば「太陽に吠えろ!」だ。
または「西部警察」。
ただ、私はほとんど「西部警察」を見ていないので、やっぱり裕次郎とえば、太陽に吠えろ!」のボス、藤堂俊介なのであった。

「太陽に吠えろ!」にはまっていたのは中学時代だけれど、そのころの私には、彼は本当におっさんにしか見えなかった。
でも「太陽に吠えろ!」のボスを石原裕次郎はなんと38歳から演じていた。
うーむ、意外に若かったのね。
本当に昔の人は落ち着いていたと思う。
まあ親と同じ年齢なのだから、おっさんに見えても無理ないけど。

なので裕次郎の若かりし日の映画を初めて見たときは、そのはつらつとした若さに正直びっくりした。
一応「嵐を呼ぶ男」を初めとして数本は鑑賞している。

で今回、「銀座の恋の物語」をGyaOで初めて見た。

ストーリー的には、銀座が舞台の、そこに住み働いている若い恋人同士が、だんだんと心を通わせていくお話。
途中、ケンカもあり、友情もあり、なんと記憶喪失もあり、ついでにミュージカルの要素も盛り込まれている。

まあ、当時の映画って、とくに昭和30年代の三人娘、美空ひばり、 江利チエミ、雪村いづみが出ている物って、いきなりみんなで歌ったり踊ったりするのがよくあったから、私には全く違和感がなく、むしろ懐かしかった。

なんだか普通ではありえない展開もあり、その辺が近年流行の韓国ドラマちっく。
年輩女性が韓ドラにはまる理由を、この映画を見て再認識した気がしました。
あと、私が子供のころにはまって見ていた、大映ドラマの原型も感じました。
「おくさまは18歳」とか「赤いシリーズ」ね。

この映画が公開されたのは1962(昭和37)年。
今期の朝ドラ「ゲゲゲの女房」と同時代だ。
ゲゲゲの舞台は調布だけれど。
当時の銀座の風景と現在の銀座を比較するのもおもしろい。
銀座4丁目の交差点や松屋通りの看板なんかも出てくるし。

石原裕次郎演じる、画家を目指している伴次郎は、現代美術社という大手の会社からスカウトされているのに、それに応じようとしない。
勤め人になってしまうと、絵への情熱が薄れてしまわないかと不安な気持ちになっているからだ。
しかし恋人である浅岡ルリ子演じるチャコ(秋山久子)は次郎に対して、「私との結婚を考えているなら、安定したお勤めをしてほしい」と願っている。

このあたりの感覚は、現代の恋人たちにも通じるところがあると思う。
舞台や時代は違っても、扱っているのは、男女間における永遠のテーマなのだろう。

結婚の挨拶を次郎の田舎である信州に一緒に行く約束をした夜、急な残業を頼まれたチャコは、一生懸命にミシンをかける。
チャコは銀座屋という一流の洋裁店のお針子で、腕もかなり良いらしい。

20時30分発、長野行きの列車に乗るため新宿駅で待つ次郎の元に、タクシーでかけつけるチャコ。
しかし、間に合いそうもないので、少しでも早く着こうと途中でタクシーを降り、もより駅から電車に乗ろうと道路を渡ろうとしたチャコにトラックが迫ってくる。

で、個人的にツボだったのが、タクシーに乗ったときのチャコのセリフ。

タクシー運転手「車より電車のほうが早いっすよ」
チャコ    「どこでもいいわ、省線の近くで降ろして」

この「省線」という言い方、やっぱり結構一般的だったんだな〜って納得。
現在のJRはこの映画の当時は国鉄。
私の子供時代はよく国電って言っていたものです。
1949年6月1日に日本国有鉄道が発足したので、1962年は国電であるべきなんだけれど、チャコは省線って言っているんですね。

実は明治生まれの私の祖母は、「省線」という言い方をしていたのです。
子供心に省線=国電という図式が私の頭の中にはできあがっていました。
祖母は静岡県の沼津に住んでいたのですが、子供時代に遊びに行って夜布団に入ると、東海道線の列車の警笛の音がよく聞こえたものです。
私の記憶の中にあった警笛の音が、チャコが事故に遭ったシーンのすぐ後、新宿駅を出発する長野行きの列車が鳴らしている音と一緒なんです。

あと、シーンは前後してしまうけれど、屋上のネオンの下で、次郎とチャコが語らうとき、ネオンがジジッっていう音を出しているのだけれど、これが個人的にはとても好き。
ネオンの音なんですよね、あの音。
最近のネオンも、あんな音するのかな?
ネオンの場面は映像も美しいです。

後半、記憶喪失になったチャコに医者(下条正巳)が、麻酔をかけて患者の心を聞くという治療をほどこすシーンがある。
ここで医者が麻酔で眠っているチャコにいくつかの質問をする。
チャコは事故後、小さな洋裁店に勤め、その後デパートに転職したらしいことがわかるのだけれど、洋裁店をやめた理由を「疲れたから」と答えている。
この一言って深いな〜と私はひとり妙に納得したのでした。

残業させられた結果、次郎と会えずに事故に遭い、記憶喪失になってしまったチャコ。
記憶を失っても得意なのは洋裁で、だからミドリヤという小さな洋裁店に勤める。
深層心理の中には次郎が残っているから、いろいろな思いが交錯してしまい、「疲れたから」につながったのかなと。

この映画の浅岡ルリ子の可愛らしさは一見の価値有りです。

あと、もうひとり、江利チエミ演じる刑事関口典子もやっぱりなかなかの存在感。
江利チエミは私の中ではサザエさんの印象が強くコメディエンヌなのですが、この映画では次郎に片思いをしているので、寂しそうな表情も多く、なんだかとっても可愛らしい。

他にも次郎が一緒に住んでいたバンドマンのピアノ弾き、宮本(ジェリー藤尾)。
彼はハーフなのですが、自分のことを「あいのこ」と自嘲気味に言っています。
ある意味懐かしい言葉。
ドラマの中では、宮本が作曲した曲がいい曲なので、次郎とチャコが詩を考えたのが「銀座の恋の物語」という設定になっています。

宮本はおそらくチャコのことを好きなのだけれど、親友・次郎の恋人だから、そのことを口に出せないでいるし、気持ちを抑えている。
だから宮本は気軽に遊べる歌手・マリと関係を持っているのだけれど、マリは宮本を愛しているらしい……というあたりが、なかなか良いのです。

銀座屋のお針子、キン子を演じる和泉雅子が黒縁のメガネっ娘でものすごく可愛いです。
久子のことを「チャコ姉ちゃん」と呼んでいる声も愛らしい。

脇にも懐かしい役者さんがたくさん登場するので一見の価値有りと思います。

2010年6月24日までGyaOで配信予定。

ちなみに国立競技場で2009年7月5日に行われた「石原裕次郎23回忌」の写真はコチラ
密かに石原裕次郎が好きなワタシなのだった。。。

<データ>
監督: 蔵原惟繕
企画: 水の江滝子
脚本: 山田信夫・熊井啓
撮影: 間宮義雄
音楽: 鏑木創
美術: 松山崇
編集: 鈴木晄
録音: 福島信雅
スチール: 井本俊康
照明: 藤林甲
主な出演:
伴次郎(石原裕次郎)…一流画家を目差す絵描きの青年。

宮本修二(ジェリー藤尾)…バンドのピアノ弾き。

秋山久子(浅丘ルリ子)…伴次郎の恋人。愛称チャコ。銀座の一流洋裁店「銀座屋」のお針子。空襲で両親を亡くしている。記憶を失って銀座のデパートのアナウンス部にいるときの名前は井沢良子。

関口典子(江利チエミ)…実は女刑事。伴次郎に思いを寄せるようになる。

春山(清水将夫)…画廊「春山堂」のご主人。

香秀社社長・沢村史郎(深江章喜)…詐欺師。銀座を食い物にしている「いかさま五郎」と呼ばれている。本名不明。

お松(清川虹子)…屋台の焼き芋屋。チャコを本当の娘のように思っている。

武さん(高品格)…屋台のたこ焼き屋・蛸八のご主人。

柳井樹理・マリ(牧村旬子)…マリというのが芸名? 宮本の彼女。

源六(河上信夫)…伴次郎の階下に住む人力車の車夫。

秀子・マギーママ(三崎千恵子)…クラブのママ。宮本のバンドやマリも出演している。

キン子(和泉雅子)…「銀座屋」のお針子。チャコを姉のように慕っている。

銀座屋のマダム(南風洋子)…銀座屋の店主。

須藤女史(新井麗子)…チャコたちの上司。洋裁部の責任者。

橋本(守屋徹)…宮本のバンドでベースを担当。

尾形(織田俊彦)…宮本のバンドでサックスを担当。

ドラマー(石崎克巳)…宮本のバンドでドラムを担当。

司会者(広瀬優)…クラブの司会者。

弘美(千代侑子)…銀座のズベ公。銀座の公衆便所と、クラブのシーンに登場。

千枝(金井克予)…銀座のズベ公。銀座の公衆便所と、クラブのシーンに登場。
★★★「他人の関係」の金井克子さんとは別人なんですね。それにしてもズベ公って、今でも通じるのかしら。。。不良娘っていう感じですね。

新人歌手・佐和ララ子(葵真木子)…歌う前にトイレに行き、代わりに関口典子が舞台に上がることになってしまう。

芸者(星ナオミ)…映画冒頭に出てくる人力車に乗っている芸者。星ナオミはクラブのホステスとしても登場。

トランペットの青年(小島忠夫)

佐藤(木浦佑三)…伴次郎の絵描き仲間。

医者(下絛正巳)…チャコの記憶喪失の治療にあたる。

男A(神山勝)…酒の密売組織の男。

男B(古田祥)…酒の密売組織の男。

男C(林茂朗)…酒の密売組織の男。

刑事(山之辺潤一)…酒の密売組織を捜査している。

刑事(深水吉衛)…酒の密売組織を捜査している。関口典子の上司。

月賦屋(峰三平)…宮本が購入したピアノの月賦屋。

月賦屋の部下(紀原土耕)

吉本(花村典昌)…現代美術社の社員。

清水部長(松下達夫)…現代美術社の部長。

東北弁の巡査(井上昭文)…次郎と宮本が沢村の会社の場所を聞いた銀座の交番に勤務。

松屋デパートの店員(重盛輝江)…チャコがアナウンス部に勤めた松屋デパートの同僚。

下宿屋のおばさん(鈴村益代)…記憶を失ったチャコが住んでいた下宿のおばさん。

タクシーの運転手(高緒弘志)…ツバメタクシーの運転手。

1962年/日本・日活/94分
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