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問題のない私たち [ネタバレ映画レビュー (日本)]

mondainonaiwatashitachi.jpg映画「問題のない私たち」 [DVD]

この間まで自分がいじめる側だったのに、いつの間にかいじめられる側になってしまっている。ちょっとのきっかけで、クラスの中の人間相関図が変わってしまう。そういう不安定に揺れ動きつつ日々が過ぎて行く10代の少女達の様子を描いた作品だ。

中学3年生の笹岡澪(黒川芽以)は父親と2人暮らし。学校(女子中)ではクラスのリーダー的存在で、集団で潮崎マリア(美波)をいじめている。周囲は注意しようものなら自分がいじめられることをおそれ、見て見ぬふり。担任教師も、自分の監督責任のなさを問われるのをおそれているのか、全く見ぬふりだ。

澪はいじめによる自殺のニュースを見ても、死ぬぐらいなら歯向かっていけばいいのに……と考えている。

ある日、新谷麻綺(まき・沢尻エリカ)という転校生がやってくる。麻綺をいじめのターゲットにしようと考えた澪だったが、逆に、麻綺をリーダーとして、クラス中からいじめを受けるようになってしまう。立場が逆転してしまったのだ。

いじめられることが辛くても、家庭では、再婚相手として同僚女性を家に連れてくる父親。澪のことなんて、おかまいなしで、自分の結婚問題に舞い上がっていて、話をする雰囲気さえも感じられない。
そんな澪の味方になってくれたのが、以前澪がいじめていた潮崎マリアだった。
一度は死ぬことを考えた澪だったが、力強くいじめに立ち向かううちに、いじめのターゲットは、澪から他へ移ろうとする。澪はいじめの連鎖を断ち切るべく、クラス全員に、いじめから私は抜けると宣言する。

映画冒頭から、プールにマリアを投げ込むシーンが登場、派手ないじめが展開される。この先どのような展開になるのかと、少し胸が苦しいような思いで鑑賞し続ける。
いじめを受けた人の傷は、いじめた側が考えている以上のもののようだ。長い年月が過ぎても心の傷として、深く刻まれている人も少なくないように思う。

この映画に登場する少女達のいじめは、ある断片を上手に切り取ってはいると思うものの、やはりどこか映画的な気もする。みんなが澪のように強く立ち向かって行ければ、いじめを苦にして尊い命を絶ってしまう少年少女が減っていくとは思うけれど、なかなかそうはならないのが現実かもしれない。しかし、この映画にはある側面での解決策を示そうとした真面目な姿勢は伺える。

生徒間のいじめが解決して、みんなで海に出かけて遊ぶシーンは、どの子もとても可愛らしく、本当に楽しそうだ。

夏休みが終わり、澪は担任教師・加藤茜(野波麻帆)がコンビニで万引きするのを偶然目撃してしまう。生徒同士のいじめ問題がようやく解決したと思ったのに、澪は今度は担任教師からのいじめに遭う。

最後には、加藤先生の正体が全校生徒の前で暴露され、先生はコンビニにあやまりに行き、平穏な日々が戻ってくるというストーリーなので安心したが、教師のいじめの部分に対する問題解決は、この映画の中では弱いように感じる。
ひとつ気になったのは、この後加藤先生が教師を続けられたのかどうなのか?
現実にこんなことがあったら、今の世の中だったら大問題になり、教師は退職に追い込まれてしまうだろう。

黒川芽以を初めて認識したのは、NHK朝ドラの「風のハルカ」(2005年)、ハルカの妹アスカ役だった。その後、NHK「名曲探偵アマデウス」の響カノン役や、「キキコミ」など、ちょっとコメディっぽい役柄のものしか見ていなかった。
この映画は、2004年2月28日公開とのことだから、上記の作品以前のものだが、クラスのみんなから念仏を唱えられ、笑ったように泣き出すシーンはものすごい迫力だった。
かなりの演技力だと感じたので、他の作品も見てみたいと考えている。
「グミ・チョコレート・パイン」を見てみようかな。

沢尻エリカは、いじめっ子がよく似合っていた。「手紙」も見ているのだけれど(まだレビューが追いついていない)、映画デビューということを考えると、後に演技派女優と呼ばれるのもわかる気がする。
また沢山の作品で、良い演技を見せてもらいたいものです。

美波は初めてこの映画で認識した。とてもキレイで、線の細さと芯の強さが同居していて魅力的だと感じた。マリアの優しさは彼女の演技だったからこそ、際立ったのだと思う。

「いじめ」がテーマだと思うと、なかなか見る気がおきない人もいるとは思うけれど、結末はそれなりにハッピーエンドなので、たくさんの10代の少女の一生懸命な演技を鑑賞する価値は十分にあると思う。

<データ>
監督・脚本:森岡利行
原作:牛田麻希(小説)・木村文(漫画)
挿入歌:「アルイテク・・・」 黒川芽衣
エンディングテーマ:「青いナイフ」 junior size
配給:レジェンド・ピクチャーズ
主な出演 :
笹岡澪(黒川芽以)…中学3年生。クラスのボス的立場。
新谷麻綺(沢尻エリカ)…転校生。
潮崎マリア(美波)…いじめられっ子。後に澪と仲良しになる。
施川瑞希(森絵梨佳)…澪の7年来の親友でクラスメート。
松野綾(小松愛)…澪のクラスメート。
校長(浜田晃)
加藤茜先生(野波麻帆)…澪の担任教師。 
松下桃花(大塚寧々)…澪の父親の再婚相手。澪の義母になる。優しい母親。
笹岡文成(勝村政信)…澪の父親。

2004年2月28日公開/日本/98分
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